楽しく日々を生きていくために必要だな、と感じることのひとつに、無駄なストレスをなくす、というのがあります。
現代社会の中で生きていく私たちには、すっかりなくすというのは難しいのかもしれませんが、なるべく減らしていきたいですよね。
心身とも疲れ果てて、楽しいことを考える気力もなくなってしまう、というのはたいていの人が経験しているのではないでしょうか。
仕事での嫌味な上司や同僚、理不尽な要求をしてくる顧客、私生活でも、もっとまともな話し方ができないのかと頭を抱える陰険な指揮者(アマチュア・オーケストラあるある)、まあ数え上げればきりがありません。
理不尽なものからは即座に逃げる、というのが大原則ですが、そうもいかないのが世の中というもの。右から左に受け流す、そんなときに便利そうな言葉を紹介したいと思います。
余談ですが、右から来たものを左に受け流す、という歌を歌っていた芸人さんが昔いましたが、笑うというより生きる指針を聞いているような気持ちになったものです。
A bon? Et alors? を久々に見た
少し前の話なのですが、たまたまテレビのフランス語講座がかかっていて、久しぶりにA bon? Et alors? という言葉を耳にしました。カタカナ書きすると「ア ボン? エ アロール?」が近いでしょうか。
そこでは、友達同士の会話で話を途切れさせず、やりとりを続けていくのに都合のいい言い回し、という紹介のされ方でした。
「へー、それで?」とか「ふーん、それから?」といった意味で相手に話を促す、相槌のような言葉、といったニュアンスでした。
まあ、それを見て正直びっくりしました。
言い方によっては、そんな意味で使えるんだ、と目からウロコが落ちるという体験を久々にしたのでした。
というのは、「A bon?」はともかく、「Et alors?」は使ってはいけない言葉、と思っていたからです。
ミッテラン元大統領の名言?
この言葉を広く世間に認識させたのは、1981年から1995年までフランスの大統領だったミッテランです。
ミッテランに愛人、そして隠し子がいることを写真週刊誌が取り上げました。
日本だったら大問題になって、進退に発展、そんな総理を選んだ政権党はどうなっているんだ、とマスコミが大騒ぎ、という展開になりそうですよね。
当時のフランスでも、その後の記者会見(記者との朝食会)で取り上げた記者がいました。
記者が「あなたには愛人や隠し子がいるそうですね」と質問をしたところ、大統領は平然と「Et alors?」と答えて終わってしまった、というのです。
この場合、日本語にしてみると「で、だから?」というところでしょうか。
この対応についてはフランス国民のほとんどは大統領を支持。当時の報道でインタビューを受けていたフランス人が「だってそれって、大統領の個人的なことでしょ?」と答えていたのをよく覚えています。
私生活に立ち入らない、という意識が徹底しているのだな、と驚いたものです。
使ってはいけないと思っていた
こういう有名なエピソードがあるので、最近のフランス語講座に驚いてしまった、というわけです。でもこれは元々どた山の思い込みが原因で、状況や言い方で言葉というのは意味が変わるということを忘れてしまってますからね。
質問した当時の記者は困ったことでしょう。ミッテランは、個人的な家庭問題を質問するのはこの国のあり方ではない、と啓蒙のために言ったのか、あるいは相当の皮肉を込めたのかそのあたりはわかりません。
少なくともどた山には、喧嘩を売るみたいになるから、フランス人には使わないようにしよう、と記憶させる出来事になったのでした。
心の中ではたくさん使おう
フランス語講座で思い込みから解放されると、これってとても使える言葉、大げさに言えば「準座右の銘」にしてもいいのかも、と考えるようになりました。
生きていて避けられない、理不尽なこと、不愉快な仕打ち、気分の悪いこと、そうしたものに当たってしまったとき、大統領気分で「A bon? Et alors」とつぶやいてみてはどうでしょう。
本当に向き合わないといけないことならともかく、どうでもいい嫌なことは、これで気分を変えていくという転換ワードにできるかもしれません。
短い人生、できるだけ楽しいことでいっぱいにして、嫌なこととはなるべく関わらない、そんな方向で考えていかないともったいないですよね。
ミッテランからの贈り物として、使っていこうかなと思っています。
コメント
世の中はなかなか変わらないので、うまくやり過ごすには、自分の考え方を変えるしかないですね。そのための魔法の言葉として「ア ボン? エ アロール?」は非常に有意義だと思います。
自分は不必要に変えることはなくて、そのままでいいのですよ。ストレスを抱えないようにこの言葉を利用できたらいいですね。